頭の中を共有しよう

2023年4月23日

発達障害や精神障害の支援の難しさは、当事者の困り感が目に見えないことが原因の一つのように思います。目に見えないので相手が何に困っているのかハッキリせずどうしたら良いか困ることは支援の現場でもよくあることです。

また当事者側も自分の困り感を上手に伝えることができない、もしくは自分でもハッキリとわかっていないということがあります。
これは本人の能力の問題だけでなく、障害が目に見えないということが原因の一つだと思います。

今回はそんな目に見えない障害を少しでも周りに理解してもらい、支援を受けやすくなる方法をお伝えします。

Contents

考えたことを共有しよう

その方法というのはタイトルにある通り、「頭の中を相手に伝える」ということです。

発達障害やうつ病を持つ人は、頭の中が独特の状態だったりします。ズレがあったり、偏っていたり、情報が入っていなかったり様々です。

しかし、これは頭の中で起こっていることなので、周りにはわかりません。

周りの人は「自分と同じように理解している」「考えている」と判断して行動します。その結果、ズレが生じてトラブルが起こり、当事者は困ります。

そこで、「この頭の中を相手と共有」が大切になります。これにより周りとのズレが減少、または無くなります。

方法その1:情報の可視化

具体的にどうやって頭の中を共有するかですが、まず1つ目は可視化することです。

具体的には「メモを取る」「メモを見せる又は復唱確認する」「マイマニュアルを自身で作成して確認してもらう」などです

この方法の特徴は職場で使いやすいこと、支援者や上司に情報の抜けや理解度、そしてその傾向を理解して貰えることにあります。

やっていること自体は仕事の基本であるため、配慮としてお願いしやすいのもメリットです。

私を含め、発達障害の方に多いのは情報の漏れや整理ができていないというパターンです。しかし、当事者も支援者も、何を理解して何を理解できていないかがわからないと対処ができません。その結果、ズレが生じてトラブルに発展していきます。

大切なのは可視化し「どんな情報が抜けているか?」を明確にすることです。メモや復唱確認などはこれに非常に役立ちます。
またマイマニュアルを作成することで、当事者は情報が整理できますし、支援者や上司も、相手の思考パターンや苦手なポイントの情報を得ることができます。

方法その2:思考の可視化

これは業務日誌や日記に「なぜ?どうやって判断したか?」「どう考えたか?」などの自分の思考や気持ちを書くことです。これを共有したい相手に見せることで自分の思考の傾向を伝えることができます。

この方法の良い点は、支援員や上司が「当事者がどのような思考の末にこの結果に至ったか?」という過程を知ることができるところです

支援者側は、思考方法に問題があれば助言ができますし、どの段階でつまづいたかもわかりやすくなります。当事者も書くことで自分の気持ちや困り感を整理することで気持ちを落ち着けることができます。

また、心理療法の知識があるカウンセラーや医師が見ると認知の歪みの傾向を把握することができます。

方法その3:思ったことを口に出す

これは見出しの通りです。「思ったことを口に出して伝える方法」です。

注意点ですが、「思ったことを何でも口にしたら良い」というものではありません。

大切なのは「自分がどんなことに対して、どんなことを考えた、どう思ったか?その結果どう動いたか?」を話すことです。

この方法は書く必要が無いという点では手間がなく良いですが、人によっては整理ができないので人を選ぶ方法でしょう。

また事前に意図を伝えた上で、自分の思考を口にしないと「聞いてもいないことを話してきて面倒ならやつ」だと思われる危険性もあります。

現実的な使用方法としては、当事者側は配慮事項としてこの方法を使うことを相手にお願いしてから使うと良いでしょう。

また、会話の最後に「確認なのですが、私は〜のように考えて.・・・のように動こうと思うのですが大丈夫ですか?」と思考過程を含めて確認をする方法も相手の時間を取らずに良いでしょう。

支援者や企業側は、

相手に「自分がどんなことに対して、どんなことを考えた、どう思ったか?その結果どう動いたか?」を聞き、否定したり呆れたりせず、「そう考えたんだね。次からこう考えるとこういう結果になるしミスしないよ」というように助言や提案をする形を取ると良いでしょう。

当事者としても安心して自分の本音を言っていけるし次にやることが明確になり前向きに作業を進められることが多いように思います。

当事者が注意しないといけないこと

これらの方法を行うにあたり、当事者が気をつけないといけないことがあります。それは「自分の辛さをわかって欲しい」という気持ちで話さないことです。

気持ちはわかります。私も鬱が酷い時は自分の辛さを知って欲しくて家族や上司に必死に話していました。しかし、鬱が良くなるとこれはあまり良い行動ではなかったと思っています。

なぜなら、支援者も上司も、一番知りたいのは「辛さの程度」よりも「どう考えてこの結果に至ったのか?」「何にどう困っているのか?」であるからです。
「辛さの程度」は現状を伝える上では大切な要素ではありますが、これをメインに話すのは違います。

大切なのは「何に困って、どう考え、今の辛さに至ったか?」という過程です。

まずは共有できる環境作りを

これは当事者にも支援者にも言えることですが、頭の中を共有する環境作りをまずはしていくことが大切です。

当事者ができることとしては、

  • 支援者や医療機関、職場などに支援、治療、配慮の一環として、頭の中を共有できないか相談をする
  • 自分が共有しやすい方法を探し提案する

支援者側は

  • 共有する機会を作る、一緒に共有方法を考えるなどです。

環境が出来たら積極的に共有を

助けてもらうためには、まずは困り感や問題を相手に知ってもらうことが大切です。

そのためにも、環境が整ったら積極的に共有をしていきましょう。

そうやって自分を知ってもらい、自分も自分のことを整理していき、相手のことも理解していく。そうやって当事者として、今の自分の困り感を少しでも緩和できるようにしていきましょう

この記事が少しでも誰かの役に立てば幸いです。