特例子会社は本当に良い企業なのか?

障害者雇用で働く際、就職先の候補の一つになるのが、特例子会社です。私の周りでも特例子会社で働いている方もいますし、人気が高いように感じられます。

しかし、「特例子会社=発達障害の人が働きやすい」ではないように思います。

今回はそのへんのことを書いていこうと思います。

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特例子会社とは

簡単にいうと企業が法定雇用率を満たすために、自社で雇うのではなく、障害者をまとめて雇うための子会社を作り、そこで障害者をまとめて雇うことです。

簡単に言うと企業が障害者を雇わないと行けない人数を満たすために自社でなく、別会社で雇い、そこでの障害者雇用の人数を自社やグループ会社で雇ったとみなしているという感じでしょうか。

私なんかより詳しくリタリコさんのホームページに記載されているので、リンクを張っておきます。
https://works.litalico.jp/column/system/007/

特例子会社のメリットとデメリット

特例子会社で働くメリットとデメリットはどんなものがあるのでしょうか?ここではその内容についてご説明したいと思いますが、これも先程のリタリコさんのページでわかりやすく説明されているので、その内容に私の意見を加える形で書いていこうと思います。

まず、リタリコさんのホームページに書いてある内容を挙げます。

リタリコさんのページでは以下の4つのメリットと1つのデメリットを紹介しています。


【メリット】

  • 特例子会社は大手企業が設立することが多く、比較的雇用の安定が見込める
  • 自分に関する情報(障害特性や業務の得手・不得手など)を会社側で管理しているため、自分のことを理解してもらいやすく、また体調などに配慮してもらいやすい傾向がある
  • 仕事をしながら、自分の体調管理・体調コントロールのスキルを上げていきやすい
  • 配慮がきいた仕事・職場・人的支援が用意されている

【デメリット】

  • 特例子会社の構造的に昇給や仕事のスキル、職域を広げにくい傾向がある
    あくまでも「傾向」です。現在さまざまな特例子会社が増加しているため、上記のデメリットに当てはまらない特例子会社もあります。

    再度引用先を貼っておきます
    https://works.litalico.jp/column/system/007/

メリット・デメリットに対する私の意見はこう

ではここからはリタリコさんのホームページに書いてあるメリットについて私の意見を加えていこうと思います。

メリット1:「雇用の安定が見込める」について

「特例子会社は大手企業が設立することが多く、比較的雇用の安定が見込める」というのは本当だと思います。障害者雇用であっても正社員登用をしっかりしていたり、福利厚生もしっかりしており、ボーナスも出る。安定性が高いものが多いです。しかし、だからこそ「競争率が高い」「辞める人が少なく求人が少ない」というデメリットもあります。

メリット2:「配慮を受けやすい」について

「自分に関する情報(障害特性や業務の得手・不得手など)を会社側で管理しているため、自分のことを理解してもらいやすく、また体調などに配慮してもらいやすい傾向がある」についてですが、これは企業や上司によるとしか言えない印象です。障害者雇用で行く場合、通常は障害特性を企業に伝えます。そのため、企業が特性や配慮事項を把握していないということはありえません。あとは担当者や直属の上司がどこまで配慮してくれるかです。

なので、「これは特例子会社ならではの配慮とは言いにくい、しかし、配慮を受けられる確率が高い」というのが私の意見です。

メリット3:「仕事をしながら体調管理スキルをUPできる」について

「仕事をしながら、自分の体調管理・体調コントロールのスキルを上げていきやすい」についてですが、これはどのようなものを指すか記事をさっと読んだだけではわかりにくいですが、企業がカウンセラーを雇っており、相談できたり、場合によっては自分に代わって上司に相談してくれたりするという場所もあります。これは非常に素敵な取り組みだと思っています。

しかし、スキルを上げるかどうかは本人の意識次第なところもあるので、必ずしも体調管理・体調コントロールスキルが上がるかは微妙なところだと思います。

メリット4:配慮がきいた仕事・職場・人的支援が用意されている

「配慮がきいた仕事・職場・人的支援が用意されている」についてですが、これは確かにそうです。可能な限りに配慮をしてくれる企業がほとんどだと思います。

ジョブコーチを置いており指導をしっかりとしたりフォローをしてくれる、就労定着支援事業を行っている事業所などと連携を積極的とってくれるなど非常に意識をこのへんを意識してくれているように感じます。

デメリット:昇給や仕事のスキル、職域を広げにくい傾向がある

「特例子会社の構造的に昇給や仕事のスキル、職域を広げにくい傾向がある」というデメリットですが、これは本当にそのとおりです。私の中では「傾向がある」というよりも「確率が高い」という印象です。

私の知る特例子会社の業務は「清掃」「社内便の仕分けと配達」「入力業務」というものが多いです。これはマニュアルが整備されており、多くの障害者にとって業務を行いやすいものです。しかし、逆にこれら以外の業務をおこなっているところは少ない印象です。その結果、スキルがアップすることや専門的な知識が身につくことがなく長年勤めても新しいなにかが身につくことが少ないです。

そして昇給するためには、リーダーシップを発揮したり、新人に指導することを求められることが多い印象を私は持っています。このようなスキルを持っている人は良いですが、それを持っていない人は昇給や出世はあまり期待できないかもしれません。

昇給やよりスキルを生かした仕事をしたいなら最初から特例子会社に入るより他の障害者雇用で働くという選択肢を取ったほうが良いと思います。

本題:特例子会社は発達障害者にとって良い企業なのか?

長々と特例子会社のメリット・デメリットを説明して来たわけですが、ここからが本題です。

確かに、昇給やスキルアップに関してはデメリットがある特例子会社ですが、それでも他にはない手厚いサポートや配慮、そして安定性というものは魅力的に映ると思います。

それは事実だと思いますし、少なくとも働きやすい環境を整えようとしてくれる素晴らしい企業だと思います。しかし、「だから発達障害者にとっても最高だと安易には考えてほしくない」のです。

その理由は2つ

  1. 特例子会社は色々な人に配慮している
  2. 「会社というのは人の集まりであり、人が集まると何かしらトラブルが起こるから」

    この2つがあるからです。

    次の章ではこの2つについてご説明していきます。

理由1:特例子会社は色々な人に配慮している

特例子会社は発達障害だけでなく、精神障害、身体障害、聴覚障害、視覚障害など様々な障害のある方に配慮をしています。これ自体は素晴らしいことです。ましてや否定するつもりはありません。

しかし、現実として全員が全員を配慮することはできないということです。誰かを配慮すると少しかもしれませんが、それに周りが合わせないといけません。それがうまくいけば良いですが必ずしもそうはいかないのが現実です。

例えば、周りの音が気になるのでイヤーマフをつけている人と、人に声をかけるのが苦手の相性はどうでしょうか?事務系の仕事でチャットで連絡を取れるならこの二人の相性は悪くないでしょう。しかし作業系の場合、人に声をかけるのが苦手な人はただでさえ声をかけるのが苦手なのに、何度もイヤーマフの人の肩を叩いて声をかけるなんてつらてく溜まらないかもしれません。

理想は、「どちらもがやりやすい方法を模索して見つける」ということですが、私が特例子会社で働いている人の話を聞いていると必ずしもこの理想のパターンばかりではないようです。どちらかが我慢しているという場合もあるようです。

配慮をされている人と配慮をあまりされていないと不満を感じる人が出てきているという現実もあるようです。

必ずしも全部の特例子会社でこのようなことが起こっているわけではありませんが、このように配慮をされていないと不満に感じる可能性があることを知っておいてほしいのです。

理由2:人が集まると何かしらトラブルが起こるから

もう一つの理由の「会社というのは人の集まりであり、人が集まると何かしらトラブルが起こるから」についてお話します。

障害があろうがなかろうが、我々は人です。障害があろうがなかろうが、性格が良い人も悪い人もいます。気が合う人も気が合わない人、生理的に受けつけない人がいるかもしれません。恋愛だってします。

これらのことは特例子会社でも当然ながらあります。上司は発達障害に理解があっても同僚の意地悪な身体障害の人は発達障害に理解がなく嫌味をいってくるなんてことも無きにしもあらずです。

結局、人が集まる場所ではどうしても何らかのトラブルは起こる可能性があり、必ずしも最高の職場なのかは入ってみないとわかりません。これは特例子会社だろうが、一般の企業だろうと、障害者雇用だろうと一般雇用でも変わりません。

どんな企業に就職するにしても大切なこと

特例子会社に就職するにしても、一般企業の障害者雇用で就職するにしても変わらない重要なことがあります。

それは自分の障害特性と配慮事項を明確にしておくことです。
これができていないと仕事がうまくいかない、障害者雇用でいったのに配慮してもらえないということがあります。

しっかりと自分の過去の失敗を振り返えるなどして相手に伝えることができるようにしていてください。

メリット・デメリットを理解して自分に合った企業選びを

色々とお伝えしてきましたが、どの選択が正しいかなんて正解はありません。

大切なのは自分が後悔しない選択をすることです。いろいろなところから情報を集め、自分の将来のビジョンを明確にして働く企業を選んでください。そうやって選んだ企業ならそれはきっとどんな企業でも正解だと私は思っています。

この記事が少しでも誰かの役に立てば幸いです。