マルチタスクが苦手!タスクスイッチングという考え方を取り入れよう
発達障害をお持ちの方の中にはワーキングメモリが弱く、同時に複数のことを処理しようとするとミスが出る、混乱してうまく仕事ができないという方がいます。
そんな人に知っていただきたいのが、今回ご紹介するタスクスイッチングです。マルチタスクができるようになるとまではいかなくても、役に立つ可能性は十分にあります。
Contents
マルチタスク=高速のタスクスイッチング
マルチタスクとタスクスイッチングの私の定義
マルチタスクとは
「同時に複数のものを処理する」「並行して別の作業をする」この定義はみなさんと同じだと思います。
例えば
複数のものを同時に料理する・複数の仕事を並行して作業・電話で相手の話を聞きながらメモをするetc
タスクスイッチングとは
こちらは私の定義になるのですが、タスクスイッチングとは、複数の作業を同時に行うのではなく、「作業を切り替えながら(スイッチして)おこなう」ということです。
例えば
音楽を30分聴く→勉強を60分する→また音楽を30分聴くetc
マルチタスク=高速のタスクスイッチング
しかし最近では、「ほとんどの人間はマルチタスクを実はできていなくて、マルチタスクとは高速でタスクを切り替えているだけ。高速のタスクスイッチングだ」という学者が出てきました。
つまりマルチタスク=複数のシングルタスクを高速で切り替えながらやっているということです。
「マルチタスク=複数のシングルタスクの高速切り替え」という考え方が重要
「いや、なんか当たり前のことを言っている」「そんなことは知っている」「結局マルチタスクはマルチタスクのまま。」「何も凄いことは言っていない」と思う人もいると思います。正直、この文章を書いている本人もそう思います。
しかし、私にとって「マルチタスク=複数のシングルタスクの高速切り替え」という考え方が非常に重要でした。それまで、私は、「マルチタスク=本当に同時に物事を脳で処理すること」だと思っていました。そしてそれができないことに悩んでいました。
しかし、この考え方を知ってあることを思いつきました。「もしかしたら、切り替えを上手にしたらある程度マルチタスクだと思われていることへも対処できるのではないか」ということです。
最近ではマルチタスクよりもシングルタスクのほうが良いと言われているし、「要は小さなシングルタスクを素早くこなす=マルチタスクなのではないか?そうすれば、こっちはシングルタスクをしているだけだし、周りにはマルチタスクをしていると評価されるはず。」そんな発想に至りました。
あとは、「どうやって切り替え速度を上げるか?」「いかに切り替える回数を減らすか?」「いかにゆっくり切り替えても問題ないようにするか?」を考え実行するだけだと思いました。
この発想が効果的なわけ ハクの理屈
シングルタスクをするので、ワーキングメモリが低くても大丈夫
この理屈でいくと、シングルタスクさえできれば良いわけですから、情報を同時に処理する必要がなくなります。そのためワーキングメモリが弱くても問題がないということになります。しっかりと段取りを組んだり、タイマーなどのツールを準備してシングルタスクをするだけです。
つまり、事前の準備さえしっかりしていればワーキングメモリに頼る必要がなくなり、ワーキングメモリの弱さは関係なくなるのです。
以上が私の考える理屈です。
ハク流 タスクスイッチング方法
その1:段取りを作り(todoリスト)で切り替える回数を減らす
作業に取り掛かる前にしっかりと段取りを立てて、どんなシングルタスクをどんな順番ですれば良いのかをはっきりさせます。そうすることで、切り替える回数を減らしたり、スイッチングポイントを明確にできます。
例:料理の場合(カレーとサラダ・フルーツの盛り合わせを作る)
料理は段取りをしっかりと立てれば、シングルタスクの積み重ねでしかありません。
この場合は、
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- カレー用の野菜を切る 10分(シングルタスク)
- カレー用の野菜と肉を炒める10分(シングルタスク)
- 水を加えて20分位を煮る 30分(シングルタスク)
- 3は30分位時間がかかるので、この間にサラダ用の野菜を切る+盛り合わせ用のフルーツを切る。(シングルタスク)
- 3にカレールーを入れて更に煮る(シングルタスク)
- 4を盛り付ける(シングルタスク)
- 時間があまれば包丁やまな板などを洗う(シングルタスク)
- 3のカレーが完成したら盛り付けて完成(シングルタスク)
-
これで、「カレーを作る」「サラダを作る」「フルーツの盛り合わせを作る」「洗い物をする」を同時並行してやることができました。
ポイントは自動でやってくれること(ここでは煮る)を作る・上手に使うことです。仕事の場合は、他人にお願いしないといけない・相手の返事を待たないといけないことを先にしてしまい、それから自分でやれることをやるのが良いでしょう。そういった作業手順を作ってから作業をしましょう。
その2:ツールを活用し別の作業から戻ってこられるようにする(切り替えを素早くする方法)
様々な作業を切り替えてやらないといけない時に、困るのは「切り替える前に自分が何をしていたか思い出せない」ということと「集中しすぎて作業を切り替えるタイミングを忘れる・逃してしまう」ということです。そういう言う時は、ツールを使いスムーズに切り替えられるようにしましょう。
例
作業Aをしている→電話がかかってきて応対し30分後に電話をかけなおすことになる→作業Aを再開すると10分後に同僚の鈴木さんから作業Cの内容を聞かれたので答える→また作業Aをする→上司に急ぎの作業Cを振られる→また作業Aをする→忘れずに30分後に電話を掛ける
この作業で私に起こる問題は
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ワーキングメモリが弱く、どの作業をどこまでやったかなどを把握できず、作業に戻るのに時間がかかる。作業を切り替えるのに時間がかかる(上の例で言うと、作業Aを再開した時にどこまでやったかを思い出すのに時間がかかる)
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集中しすぎて作業のスイッチを忘れてしまうことです。(上の例で言うと、電話をかけ忘れる)
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そんな時に私がしている具体的な対策は
その1:メモを書いて別の作業にすぐに切り替えられる・戻れるようにする
作業を切り替える時に、その作業がどこまで進んで、再開する時に何をすれば良いのかを書いておくと非常に再開がスムーズになります。
上の例のケース「作業Aをしている時に同僚の鈴木さんから作業Cの内容を聞かれた」では、「はい。なんでしょうか?少しお待ち下さい」と行って再開する時に何をすれば良いのかを付箋にメモしておくことを私はしています。
その2:タイマーを使って別の作業から切り替えて作業を忘れないようにする
ついつい作業に集中していると並行してやっている作業や、時間が決まっている作業を忘れてしまうということがあります。上の例だと「電話がかかってきて応対し30分後に電話をかけなおすことになる」ってやつですね。こういう場合には、タイマーをかけておいて、忘れても思い出せるようにしておきます。料理もタイマーがあれば、鍋で煮ていることを忘れることがなくなり、安心して他の作業ができます。
そしてタイマーが鳴ったらタスクをスイッチして電話をかけ直せば良いのです。
その3:タスクの切り替え時間を伸ばす
マルチタスクとシングルタスクの切り替え速度が速く、限りなく同時処理になってしまう作業というものが存在するのも事実です。
電話応対はその良い例だと思います。相手の話を聞きながら、メモを取るという作業は「聞く」というシングルタスクと「書く」というシングルタスクをほぼ瞬時に切り替えなくてはならず、ほぼ同時に行う形になります。
こう言う時にするのが、いかにゆっくり切り替えても問題がないようにするかを考え対処することです。
電話応対で、私がしているのはとにかく「ゆっくり喋る」「復唱する」をして切り替える時間を作ります。
こんな感じです。
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- 知らない人から電話がかかってくる(自分の担当している人の場合は覚えていたり、データがあるので今回は除外します)
- 【聞くタスク】電話の相手「豊橋ビル工業コンサルティング会社の阿倍野です。お世話になっております。」
- 【書くタスク】「いつもお世話になっております~」とゆっくりと言いながら、私は相手の企業名をメモするというタスクをする。(ここは「いつもお世話になっております。」は反射で言えるようにしておいてメモを取るタスクに意識を全振りする。)
※(この時相手の名前が長くて覚えられない。無言でメモを取るわけには行かないので以下のようにさっと書く)
↓
とりあえず、
トヨ
ビ
コン
アべ
くらい書けたら上出来です。
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- 【引き続き書くタスク+読むタスク少々】最初から書いた部分を口に出しながら上から書けなかった部分を埋めていく。こんな感じです↓
「豊橋ビル工業・・・のえーと阿倍野さまですね」と書き終えたメモをヒントに復唱し、抜けている部分や思い出せない部分を埋める
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- 【聞くタスク】間違えていると相手が再度行ってくれるので、抜けている部分のみ集中して聞く。
- 【書くタスク】再度復唱しながらさっき書いた部分を更に埋めて後で思い出せる範囲まで埋める
トヨはし
ビるこう
コンさるてぃ
アべノ
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- 【聞く】相手が話す要件を聞く
- 【書く】ゆっくり復唱しながら箇条書きで書く
- 7と8を繰り返す
- 最後に「内容を確認させていただいてよろしいでしょうか?」と行ってメモを読みあげ、内容を確認・修正する
ポイントは「ゆっくり話す」「復唱する」です。そうすること自分が書く時間を稼ぐことができるだけでなく、ワーキングメモリが弱くても覚えておける確率が上がります。
こうやって「聞きながら書く」というのを少しでも「聞く→書く」になるように工夫するだけでだいぶ、マルチタスクが楽になります。
シングルタスクがベスト
タスクスイッチングの話をしてきましたが、何だかんだいってシングルタスクが一番はかどりますし効率が良い気がします。現在では科学的にもシングルタスクのほうが良いと言われているようなので、可能な限りシングルタスクでじっくり取り組めるようにしましょう。
そのためにもスケジュール管理や日々の予定をしっかりと立てて、マルチタスクを減らしていくのが大切です。
私もまずは、スケジュール管理や予定を調整してシングルタスクにできるようにします。それができない場合に、これらの方法を使っています。まずはマルチタスクを減らす方向で動きましょう。
この方法のメリットとデメリット
メリット
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- 練習すればある程度習得できる気がします(サンプルが自分だけなので言い切れませんが)
- 段取りや計画を立てるスキルが身につく。またその練習になる。(特に料理は良い練習になります。)
- マルチタスクをしているように見える
- ミスが減る
デメリット
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- 特性上、計画を立てたり段取りを組むことが凄く苦手な人には向かない
- タスクスイッチングも結局、シングルタスクより疲れる+効率は落ちる
- 人によっては習得に時間がかかる
こんな人におすすめ
- マルチタスクができなくて困っている人
- 段取りを考えるのが好きな人・得意な人(かなり素質ありです)
- 短時間の作業の連続は得意な人
- 料理が得意な人(素質ありです)
マルチタスクが苦手な人は試してみて
私の知る発達障害の方にもマルチタスクが苦手という人は結構います。しかし、全員が全くマルチタスクができないというわけではありませんし、全員程度が違います。中には私のようにある程度の慣れや、工夫で対処できる人もいます。
自分はダメだと諦めるまえに、今回ご紹介したタスクスイッチングという考えを取り入れてみてください。今回の方法もお金はかかりませんし、リスクらしいリスクはありません。
ダメ元で試してみてください。
もしかしたら、自分の新たな可能性に気付けるかもしれません。
この記事が少しでも誰かの役に立てば幸いです。