障害者雇用と資格について語ります

2021年8月22日

資格を持っていると就職に有利というのは一般的によく言われていますし、履歴書の見栄えが良くなるのも事実です。これは障害者雇用でも変わりません。
しかし、「資格を持っている」=「採用されやすい」「働き続けられる」ではありません。

今回はそのことをお話しようと思います。

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障害者雇用でも資格は有利です

仕事をするには求人に応募して採用される必要があります。資格を持っていると有利に働くのは事実です。最低限の知識があることや自分が持っているスキルを具体的に伝えることができるのは大きなメリットです。

皆さんも「英語が読めます」と言われるよりも、「英検1級です」と言われた方がその人の能力を把握しやすいはずです。日本英語検定協会のHPによると英検準1級は「社会生活で求められる英語を十分理解し、また使用することができる。」と記載されています。ですので「英検準1級です」と伝えると、相手は「最低限の日常会話やビジネス英語は読んだり話したりできるのだ」とこちらの英語のレベルを理解しそれに見合った評価をしてくれるでしょう。

この他にも、この資格を取得するために努力したということも伝えることができます。自分が努力家であることや働き出してからも努力して成長できる人材であることをアピールする際に資格取得エピソードが使えます。

このようにメリットがあるのは確かなので、心身に余裕がある人は資格取得の勉強をするのはありです。

資格を持っていてもニーズに合っていないと採用されない

いくら資格を持っていても、企業側が応募してきた人に求めるものは企業によって微妙に違います。求人を見てもそれはわからない場合があり、そのせいでミスマッチが生まれてしまうことがあります。

ハローワークの求人の場合は窓口で、転職エージェントを使う場合は担当に、応募する前に確認してミスマッチを防いでください。

企業が有資格者に期待するパターンを紹介

では具体的に企業側は有資格者にどんなことを求めて求人を出しているのでしょうか?そのパターンをご紹介していきます。こちらを参考にしてミスマッチを避けてください。

パターン1:即戦力になる人を求めている

    • これが障害者雇用関係なく一番多いでしょう。同業他社からの転職者などをメインターゲットにした求人です。入ったらすぐにその資格を生かした仕事をして欲しいと思っているケースが多く、ただ資格を持っている人だと務まらない場合があります。
    • 実務経験がないと有資格者でも採用されないこともある求人です。
    • 傾向としては、給料や待遇面が良い場合が多いように思います。   

パターン2:最低限のことができることを期待している

    • 「この資格を持っているなら最低〜の作業はできるよね」「うちはこの作業をしてくれる人を探しているんだよね」パターンです。
    • 準即戦力と言ったところでしょうか。ハローワークの求人なら聞けば問い合わせてくれると思います。かなり前に資格を取得したので内容は覚えていないという人は復習しておくと採用されやすく、採用後もスムーズに仕事を始められるでしょう。

パターン3:最低限の用語が理解でき、関係する業務に関心があることを期待している

    • 業界的にこの資格を持っているくらいの最低限の知識が欲しいというパターンです。比較的容易な資格の場合も多いと思います。
    • 本当に最低限の知識を問うためのものです。育てようとしてくれる可能性が高いパターンです。

パターン4:足切りや応募防止??

    • あんまり信じたくないですが、誰が応募できるねんというような資格を求めているパターンがあります。ハローワークに障害者求人を出すように言われたから出しているだけというパターンかもしれません。
    • しかし一方で、もしかしたら本当に「良いい人がいたら欲しい」企業かもしれません。こういうパターンもあるのも事実で、そういう人を見た経験もあります。資格を持っている人は挑戦してみるのも良いかもしれません。

企業によって思惑はそれぞれ違います。それでもこういうパターンも有るということは頭にいれておいてください。企業がどんな人材を求めているかを求人を見て考え、調べることで応募損になることを減らすことができるでしょう。

重要:「資格を持っている=働き続けられる」ではない

たしかに、資格を持っていることで他の求人より良い条件の仕事につくことができるかもしれません。しかし見出しにもある通り、資格を持っているからといって働き続けることができるとは限りません。それはなぜでしょうか。

配慮をしっかりと受けられない場合がある

難易度の高い資格を求めている障害者求人=障害者を雇った経験が少ない(特に精神・発達)の場合があります。こういう企業だと障害に対する配慮の経験がないので、どう配慮して良いかわからないという場合があります。

雇用した精神や発達の人が優秀なら余計に障害特性が見えずに困ってしまうこともあるでしょう。働く側は辛い思いをするし、企業側も「なんとかしてあげたい気持ちはあるがどうして良いかわからない」という状態になり、しんどくなり退職するハメになることも考えられます。

自分の特性やコミュニケーションの問題

資格があり知識面やスキル面ではその仕事をするのに何ら問題がないけど、仕事が続かないという方もいます。原因として「自身の障害特性とその対処方法をしっかりと把握していない」「コミュニケーションに問題がある」ということが挙げられます。

この場合は、自分自身がしんどくなったり、人間関係がうまくいかなくなり退職してしまいます。その結果、せっかく良い待遇で採用されたのに数ヶ月しか働けずに待遇の悪い場所で働いた場合よりも稼げないといことが起こります。

このように働きだしてから必要となるのは、資格よりも自己理解や基本的なスキルであることがあります。ですので、まずは自己分析をして「これらのスキルがあるのかどうか?」をしっかりと見極めることが必要です。

まずは自分の持っている資格やスキル・足りないものを知りましょう

資格が役に立つと言ってみたり、資格があっても働き続けられないと言ってみたり、「結局どっちなんだ」と思う内容で申し訳ございません。資格はあくまでも自分の就職活動や仕事で使うツールの一つに過ぎません。

大切なのは、「働く上で必要な基本的なスキルの中で自分が足りていないもの」を知ることと「自分が持っている働く上で役に立つ武器」を知ることです。そしてその上で自分がどうするかです。

発達障害や鬱を持っていると他の人が容易にできることが自分にはできない場合もあり、自分のスキルに目を向けるのが本当に辛いと感じるかもしれません(少なくとも私はそうです)。しかし、それでも自分と向き合い、自分を知ることが大切だと思います。

では、どうすれば自分のことを知りることができるのでしょうか?方法をご紹介します。

その1:自分の長所・武器を書き出す(資格も含む)

    • 資格だけでなく、面接や仕事で役に立ちそうな長所をとにかく書き出しましょう。

その2:自分の資格や長所を活かせる仕事を書き出す

    • その1で書き出した自分の持っている資格や長所を生かしてどんな仕事ができるか?を書き出してみましょう。役に立った具体的なエピソードや「こういう状況で役に立つ」と思うということも書いてください。

その3:自分の短所を書き出す

    • ここでは障害かどうかは気にせずにとにかく書き出してください。
    • 自分の短所が過去にどんな場面で問題になったか?や今後どういう場面で問題になるかを書き出してください。

  ※ここはメンタル的に辛いときはネガティブになってしまうことがあるので注意してください。

その4:自身の障害特性とその具体例とお願いしたい配慮を書き出す

    • 障害特性を書き出してください。そのときに、程度や具体例を入れるようにしてください。発達障害の場合は程度問題の場合があります。相手に伝えるためだけでなく、自分が自分を知るためにも重要な工程です。
    • 具体的に相手に何をしてほしいのか?配慮事項を書き出してください。

その5:その1~その4を踏まえて、現段階でどんな仕事ができるか考える

    • ここで改めて、自分にどんな仕事ができるか考えてください。場合によってはその1で挙げた資格が役に立たない・使わない仕事の場合もあります。それでも構いません。持っている資格を使わない仕事に就いている人は実際にたくさんいます。
    • 現実的かつ客観的に考えるようにしてください。
    • その2で挙げた仕事とその5で挙げた仕事との違いを意識するのが目的です。

その6:その3・その4で挙げた短所や障害特性をどうするか考える

    • ここではその2で挙げた仕事とその5で挙げた仕事とのギャップをどう埋めるかを考えていきます。
    • 自分の短所や障害特性に対して対策や改善策を考え実施するのか、それともそのままでもできる仕事を探すのかを検討します

その7:その1~その6までを他人に見てもらい客観的な意見を取り入れる

    • 客観的な視点でこれらを行うのはなかなか難しいものです。そこで、他人の意見を聞くことが非常に重要になってきます。他人の意見を聞くことで、思わぬ短所や長所が見つかることがあります。
    • ハローワークの障害専門窓口で相談すると相談に乗ってもらえるでしょう。

まずはこれを行ってください。その上で自分の「したい仕事」と「できる仕事」とのギャップを埋めていってください。なかなか大変ではありますが、自身の長所や資格を活かしたり、働きだしてから困らないためにもぜひやってみてください。

障害や短所を理解した上で、自分の武器や資格が活かせる仕事を!!

自分の武器を上手に活かせて、障害特性と上手に付き合っていける職場を見つけることが、就職活動並びに長く働く上で重要になってくると私は思っています。そのためにも、自分の長所だけでなく短所や障害のことも知り戦略を立ててみてください。その中で上手に資格を活かしてください。

この記事が少しでも誰かの役に立てば幸いです。