特化型移行支援事業所の利用の前に読んでください

最近は「プログラミングに特化した」とか「IT特化型」など売りが明確な特化型の就労移行支援事業所が増えてきています。

ニーズがあるのはわかります。そして別にそれが悪いとも思いませんし、全て否定するわけではありません。しかし、利用する前に考えて欲しいのです。考えた上で利用して欲しいというのが私の意見です

今回はそこを話していきたいと思っています。

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特化型就労移行は悪くない

より専門的な知識が学べるというのは非常に良いことです。就職活動において明確に「これを訓練して身につけました!」と伝えやすいです。またIT系ならポートフォリオなどで、自分の訓練成果を示すことが容易にできます。

専門的な知識は職場によっては重宝されるので、居場所を作りやすかったり、給与に反映されることも考えられます。

これは大きなメリットです。なので「特化型就労移行支援事業所はあり」だと私は思っています。

安易には選んで欲しくない

しかし、こういう特化型の就労移行支援事業所を安易に選ぶのは私はオススメはしません。

しっかりと考えて選んで欲しいと思っています。ここではその理由をご説明していきます。

専門的な知識のレベルの検討

まずは就労移行に限らずどんなサービスでも言えるのはその特化具合です。どの程度特化しているのか?どこまで専門的なことが学べるのか?これはかなり重要なポイントです。

特化しているという割には大したことなかった。レベルはそんなに高くなかったなんてことは就労移行だけでなく塾でも学校でもよくある話です。しっかりとその特化具合や学べるレベルを知ることが大切です。

その際に注意していただきたいのは「〜ができる人がいる」というフレーズです。このフレーズはその場所の歴代のトップオブトップの人のことを指している場合があります。この表現は「怪物レベルの超例外ですが」と同義だったりします。

まずはその事業所の平均的なレベル、卒業する時にどの程度のレベルに達しているか?平均値を知ることが大切です。

またどんな職種や待遇で就職しているなどのリサーチをしてから利用を決めましょう。

指導方法は合っているか?

専門的な知識に特化している事業所に通うくらいなら「そもそも専門学校に通った方が早いしよりプロから学べるのではないか?」と私は思ってしまいます。

専門学校に通っても理解できない、特性上、専門学校のやり方では難しいから就労移行支援事業所に通うという人は、そこの学習スタイルをしっかりと確認しましょう。単に動画を見て学習するなら別にどこに行っても対して変わりません。(確かに就労移行支援事業所は福祉施設なので税金で勉強できるので安くつくことはありますが)

自分の特性上、なかなか理解できない。学ぶことができないとなれば、結局知識を習得できず、、特化型の就労移行支援事業所に行った意味はほぼなくなるでしょう。

学習においてどのようなサポートを受けられるのかをしっかり確認してから利用することをオススメします。

最低限の他のスキルがいる

これが私が一番考えて欲しいところです。私が見てきて発達障害や精神障害をお持ちの方で、資格を取得したり、一点突破を目指した方は多くいました。その方々の中にはうまく一点突破できた方とそうでない方がいました。その違いはズバリ、最低限の必要なスキルを持っていたかどうかです。

例えばプログラミングが凄くできたとして、それを誰が売り込むのですか?仮に就職できたとしても、最低限の職場でのやりとりはあります。それをするのは誰ですか?どんなに突出した専門的な知識やスキルを持っていても他のスキルもある程度求められます。これを理解せずにそこに対して全くアプローチしていないと、どんなに一つのスキルが突出していても面接で採用されない。または仕事が長続きしないということになります。

一点でライバルと同等以上の価値を提供する必要がある

これは別に障害の有無や、就労移行支援事業所に限らず、一点特化型の宿命です。

一点特化するということはそこに魅力を凝縮することです。一点で勝負できるということは、「他のことをさせるより、これだけをさせておいてたら他の求職者や同僚と同等以上の価値を生み出す」と企業に評価されていることです。

特化したもののレベルが低いとその分他のこともしないと、他の求職者や同僚と同等という価値があると企業に評価してもらえません。

一点特化型でいくと決めたならそれなりのレベルまで知識やスキルを高めてください。これは他を捨てた人間の宿命だと思います。

オールラウンダーに勝てるのか戦略や職種・職場選びが必要

就職活動ではライバルになる人が出てきます。その際に対戦相手が「特別秀でたスキルはないが、どれも最低限できる」というタイプの場合、その人に勝てるのか?を考えて就職活動をする必要があります。

信じ難いかもしれませんが、稀に「なんで障害者雇用なの?」って思うくらいオールラウンドに優秀な人がいます。そういう人に勝てないのは仕方ないでしょう。しかしどれも最低限のレベルでバランスよくできる人に勝てないのは問題です。

このタイプは元々はオールラウンダーでは無いですが、努力や訓練、工夫によりオールラウンダー化した人です。 

このタイプに自分はなれない。オールラウンダーとして勝負しても勝てないから特化型で勝負をかけたはずです。そのタイプに負けるということはその職場であなたレベルは特化型と呼ばない。あなたくらいのレベルのスキルがあるオールラウンダーがいる、もしくはそもそも特化型よりオールラウンダータイプを求めている職場や職種である可能性があります。

自分のレベルの特化型が活躍できる職場や職種、求人に応募する戦略性が必要になってきます。これを自分でできないならこの作戦も考えたり支援もしてくれる事業所を探すことが重要でしょう。

一点特化型は覚悟がいる

スキルによりますが、特化するものが専門的であればあるほど汎用性がなくなります。これは仕方ないことです。
そのスキルで一点突破できなければ、潰しが効かない可能性があります。また途中で進路変更が難しい可能性もあります。

絶対に潰しが効かないとか、進路変更ができないわけではありませんが、待遇が下がるなどのリスクを負う可能性が高いでしょう。

その覚悟を持つことが求められます。

特化型就労移行が向く人とは

ここまでは、特化型の就労移行支援事業所のデメリットを話してきましたが、どんな人が特化型の就労移行支援事業所と相性が良いのでしょうか?
私なりの考えをここではご紹介していこうと思います。

特化するものと特性の相性が良い

心身共に安定しており、障害特性とその特化するものの相性が良いタイプの人は特化型の就労移行支援事業所に向いていると言えるでしょう。

例えば、電話応対が苦手な人や場面緘黙の人はプログラミングに特化した事業所に通い、プログラミングスキルに特化していけば在宅でも仕事ができますし、企業に貢献することができるでしょう。通信手段も電話ではなくチャットやメールなどを用いてカバーができます。

こういう自分の障害特性と特化するものが相性が良い人は特化型事業所でスキルを磨くのも良いでしょう。

まずは自分の障害特性を知っており、その仕事なら特化型でもやっていけることを把握しておくことが必要になります。これらができている人にとっては特化型事業所は良い場所になるでしょう。

働けるそして働きたい業界や職種が決まっている人

自分の能力や特性と相性がよくなおかつ自分が働きたい職種や業界が明確な人は特化型と相性が非常に良いです。

特化型事業所はその職種や業界に利用者を就職させた実績を多く持っていることが多いです。また営業活動もしており、あなたに実力があれば合う企業に紹介してくれたりします。

他の事業所よりも自分の働きたい業界や職種で働ける確率が上がります。

その職種や業務が凄く好き

すごくそのジャンルが好きで自分でも学んできている人が更なるスキルアップを狙うために特化型事業所を利用するのは良いでしょう。

注意が必要なのは、先程も述べたように特化型事業所で得られるスキルや知識がどの程度のものなのかを事前に確認しておくことです。そうしないと「自分でも学べるレベルのことしか学べない」ということになります。

学習スキルに問題が無い

学習障害がない、その分野を自分で勉強してみたがそれなりに理解できそうという人にも良いでしょう。

逆に学習障害があると適切な配慮をしてくれる事業所でないと特化しているスキルを得られない可能性があります。

またその分野をサラッと独学した時点で無理だと思えば、そもそもその分野に向いていない可能性があります。別の向いてる分野に特化した事業所を探すか、他のタイプの事業所を探すのが良いでしょう。

結局最後は責任と覚悟が必要

色々言ってきましたが、一点特化で勝負するというのは就職に限らず大抵の場合はリスクがあります。

しかし、これは他の選択にも言えることです。どんな選択をしても何かしらのリスクを負うことには変わりありません。だから覚悟を持って選ぶことか大切ですそしてその選択の責任はあなたにあります。

どんな事業所もあなたの人生に責任を持ってはくれません。これもまたどんなタイプの事業所を選んでも同じです。

自分の人生に対して責任と覚悟を持ち選択をしていく。これは本当に障害の有無に限らず大切なことです。事業所選びもそういう気持ちでして、自分の人生を納得できるものにしていただきたいと思っています。

この記事が少しでも誰かの役に立てば幸いです。